2026年10月14日

札幌市中央区桑園にある桑園オリーブ皮膚科クリニックの院長こと米田明弘です。
「抗ヒスタミン薬を飲んでいるのに、蕁麻疹が繰り返し出る」
「薬を増量しても、かゆみや膨疹が十分に治まらない」
「注射以外に新しい治療方法はないの?」
このような慢性蕁麻疹の患者さんに対する新しい治療選択肢として、「ラプシド錠25mg」が登場しました。
ラプシドは、一般名をレミブルチニブといい、「BTK阻害薬」と呼ばれる新しい作用機序を持つ飲み薬です。
2026年6月に「特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対して承認され、2026年10月14日付で薬価収載され、保険診療で使用できるようになりました。薬価は1錠929円です。
今回は、ラプシドの特徴、対象となる患者さん、効果、副作用、薬価、従来の治療との違いについて、札幌の皮膚科医が解説します。
ラプシドとは
ラプシド錠25mgは、特発性の慢性蕁麻疹に使用する内服薬です。
有効成分のレミブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)という細胞内の酵素の働きを抑える薬です。
慢性蕁麻疹では、皮膚に存在する肥満細胞や血液中の好塩基球が活性化し、ヒスタミンなどの炎症物質を放出することによって、かゆみや膨疹が現れます。
ラプシドは、肥満細胞や好塩基球の活性化に関係するBTKの働きを阻害し、ヒスタミンなどの放出を抑えることで、蕁麻疹の症状を改善します。
従来の抗ヒスタミン薬とは異なる仕組みで作用することが特徴です。
どのような蕁麻疹に使う薬?
ラプシドの対象は、成人の「特発性の慢性蕁麻疹」です。
慢性蕁麻疹とは、赤く盛り上がる膨疹やかゆみが繰り返し現れ、その状態が一般的に6週間以上続くものをいいます。
ラプシドは、次のような患者さんに使用を検討します。
食物や物理的刺激などの明らかな原因が特定できない
第2世代抗ヒスタミン薬を適切に使用しても症状が治まらない
抗ヒスタミン薬を増量しても、かゆみや膨疹を繰り返す
蕁麻疹によって睡眠や仕事、日常生活に支障がある
これまでの治療だけでは十分な症状のコントロールが得られない
ラプシドは、軽い蕁麻疹に最初から使用する薬ではありません。抗ヒスタミン薬などの標準的な治療を行っても効果が不十分な場合に、追加して使用する薬です。
食物アレルギーによる蕁麻疹にも使える?
ラプシドは、食物アレルギーや薬剤アレルギーなど、明らかな原因によって起こる蕁麻疹を対象とした薬ではありません。
また、風邪などに伴って一時的に起こる急性蕁麻疹や、寒冷、圧迫、発汗、日光などによって誘発される蕁麻疹に対して、すべて同じように使用できるわけではありません。
蕁麻疹の種類によって治療方法が異なるため、まず皮膚科で病型を診断することが重要です。
ラプシドの飲み方
通常、成人にはラプシド錠25mgを1回1錠、1日2回服用します。
臨床試験では、第2世代抗ヒスタミン薬にラプシドを追加して治療が行われています。そのため、ラプシドを開始したからといって、自己判断で抗ヒスタミン薬を中止しないでください。
服用方法やほかの薬の継続については、症状を確認しながら医師が判断します。
小児を対象とした臨床試験は行われておらず、現時点では成人が対象です。
ラプシドにはどの程度の効果がある?
国際共同第Ⅲ相試験では、第2世代抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られなかった18歳以上の慢性蕁麻疹患者さんに、ラプシドまたはプラセボを追加して比較しています。
蕁麻疹のかゆみと膨疹を1週間単位で評価する「UAS7」という指標では、治療開始12週後に、ラプシドを使用したグループでプラセボより有意な改善が認められました。
症状が完全に消失したことを示すUAS7=0を達成した患者さんの割合は、ラプシド群31.1%、プラセボ群10.5%でした。
ただし、すべての患者さんに同じ効果が得られるわけではありません。治療開始後は、かゆみ、膨疹の出る日数、睡眠への影響などを確認しながら、効果を評価します。
また、発売されたばかりの薬であるため、日本の実際の診療における長期的な使用経験については、今後さらに情報が蓄積されていくと考えられます。
抗ヒスタミン薬との違い
抗ヒスタミン薬は、放出されたヒスタミンがH1受容体に結合するのを抑える薬です。
一方、ラプシドは肥満細胞や好塩基球が活性化する過程に関係するBTKを阻害し、ヒスタミンなどの炎症物質が放出される段階に作用します。

ラプシドは抗ヒスタミン薬の代わりに最初から使用する薬ではなく、標準的な治療で十分な効果が得られない場合の選択肢です。
ラプシドとゾレアの違い
抗ヒスタミン薬で効果不十分な慢性蕁麻疹に対しては、これまで生物学的製剤のゾレアも使用されてきました

飲み薬と注射という大きな違いがありますが、どちらが一律に優れているというものではありません。
症状の程度、これまでの治療歴、通院のしやすさ、併用薬、患者さんの希望などを考慮して選択します。
なお、ラプシドと蕁麻疹に対する生物学的製剤の併用については、安全性と有効性が確立していないため、電子添文では併用を避けることとされています。
ラプシドの主な副作用
電子添文に記載されている主な副作用には、次のものがあります。
上気道感染
点状出血
紫斑
あざ、皮下出血
鼻血
歯ぐきからの出血
結膜出血
国際共同第Ⅲ相試験では、52週までの副作用発現頻度は17.5%で、主な副作用は点状出血でした。別の海外第Ⅲ相試験では、副作用発現頻度は25.3%で、点状出血や斑状出血などが報告されています。
BTKは血小板の働きにも関係するため、ラプシドの使用中は出血に注意が必要です。
鼻血や歯肉出血が止まりにくい、身に覚えのないあざが増えた、点状の出血が多数現れたなどの症状がある場合は、医師へ相談してください。
手術・抜歯を予定している方
ラプシドを使用している患者さんが手術を受ける場合、手術の内容や出血リスクに応じて、手術前後3~7日間の休薬を検討することがあります。
歯科で抜歯などを受ける場合も、ラプシドを服用していることを歯科医師へ伝えてください。
自己判断で休薬せず、処方した医師と手術・処置を担当する医師に相談しましょう。
併用薬に注意が必要です
ラプシドは主にCYP3A4という酵素によって代謝され、ほかの薬の作用に影響する場合もあります。
特に次のような薬を使用している方は、診察時に必ず医師へ伝えてください。
クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビルなど
カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシンなど
ワルファリン
リバーロキサバン、アピキサバン、ダビガトランなどの抗凝固薬
ジゴキシン
コルヒチン
メトトレキサートなど
サプリメントや市販薬を含め、お薬手帳を診察時にお持ちください。
ワクチン接種について
ラプシドの使用中は、生ワクチンの接種を行わないこととされています。
また、インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンについても、十分な免疫反応が得られるよう、接種前後にラプシドの一時的な中断を検討する場合があります。
予防接種を予定している方は、事前に処方医へ相談してください。
妊娠・授乳中の使用
妊娠中または妊娠している可能性のある方には、治療による利益が危険性を上回ると判断された場合に限って使用します。
妊娠する可能性のある女性は、服用中および最終服用後1週間、適切な避妊が必要です。
授乳中の方については、治療の必要性と母乳栄養の利点を考慮し、授乳を継続するか、治療を継続するかを検討します。
妊娠を希望している方、妊娠中または授乳中の方は、必ず医師へお伝えください。
ラプシドの薬価と自己負担額
ラプシド錠25mgの薬価は、1錠929円です。
1日2錠服用するため、薬剤費は1日1,858円となります。

これはラプシドだけの薬剤費から計算した概算です。実際には、診察料、処方箋料、調剤基本料、ほかの薬の費用などが加わります。
また、新薬は原則として薬価収載の翌月から1年間、1回に処方できる日数が14日分までに制限されます。そのため、発売後しばらくは通常より受診間隔が短くなる可能性があります。
ラプシドについてよくある質問
Q1.蕁麻疹が出たときだけ飲めばよいですか?
ラプシドは、症状が出たときだけ頓服する薬ではありません。通常は1回25mgを1日2回、継続して服用します。
服用を忘れた場合の対応については、医師または薬剤師の指示に従ってください。
Q2.ラプシドを始めれば抗ヒスタミン薬を中止できますか?
ラプシドは、抗ヒスタミン薬などによる治療で十分な効果が得られない場合に追加する薬です。自己判断で抗ヒスタミン薬を中止せず、医師の指示に従ってください。
Q3.急に起こった蕁麻疹にも使えますか?
ラプシドは、既存治療で効果不十分な特発性の慢性蕁麻疹が対象です。一時的な急性蕁麻疹に通常使用する薬ではありません。
Q4.子どもにも使用できますか?
現時点では成人が対象です。小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
Q5.ゾレアと一緒に使用できますか?
ラプシドと蕁麻疹に対する生物学的製剤の併用については、安全性と有効性が確立していないため、併用を避けることとされています。
Q6.どのくらい飲み続けますか?
治療期間は、症状の改善、再発の有無、副作用などによって異なります。一定期間使用した後に効果を評価し、継続、変更または中止を検討します。
札幌で慢性蕁麻疹の治療をご希望の方へ
慢性蕁麻疹は、見た目だけでなく、強いかゆみ、睡眠不足、仕事への集中力低下など、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
抗ヒスタミン薬を服用していても症状を繰り返す場合は、薬の種類や量が適切か、別の病型ではないか、追加治療の対象になるかを改めて評価することが大切です。
桑園オリーブ皮膚科クリニックでは、札幌・桑園周辺の慢性蕁麻疹について診察を行っています。
ラプシドの使用を希望される場合も、まずこれまでの治療歴、蕁麻疹の経過、併用薬、出血しやすさ、手術や予防接種の予定などを確認し、適応を慎重に判断します。
抗ヒスタミン薬を飲んでいても蕁麻疹が治まらない方、毎日のかゆみや膨疹でお困りの方は、皮膚科へご相談ください。
※発売直後は、調剤薬局の在庫状況によって取り寄せが必要になる場合があります。
※本記事は2026年10月14日時点の電子添文および公表情報に基づいて作成しています。一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。

